体の形づくりの過程では、適切な場所で、適切な量の細胞が増殖したり、分化したり、あるいは死んだりすることで、器官や組織が正しい形につくられる。細胞が自主的に死ぬ “細胞死”は、発生過程でおこる重要な現象の一つであり、様々な器官や組織の形成過程でみられる。特に四肢の発生過程では、手首や指の間で細胞死がおこることが知られており、細胞死の数が少ない場合には指の間に水かきができる。このよく知られた現象がどのようなメカニズムによって制御されているのかという問題については、細胞死をおこす領域に特異的に発現している BMP が関与していることはわかっていたが、BMP シグナルから細胞死がどのように実行されるのかについてはわかっていなかった。 そこで、BMP シグナルと細胞死をつなぐ因子の候補として、ほかの器官の形成過程で BMP シグナルに制御されており、かつ、細胞死や細胞増殖などに関わる複数の遺伝子を標的にすることが知られていた AP-1 転写因子 MafBに着目し、四肢の細胞が生きるべきか、死ぬべきかの運命を制御する仕組みを解明した。 (上)MafB (緑)のヘテロ二量体(異なる二種のタンパクの結合体)のパートナーが cJun (青)であった時は、p63 や p73 といった細胞死を促進する遺伝子(紫)の発現が活性化され、細胞は死ぬ運命に導かれる。 (下)MafB (緑)の二量体パートナーが cFos (橙)で あった場合は、細胞は生きる運命に導かれる。 また、MafB、cJun、cFos 遺伝子のうち、細胞死がおこる領域に特異的であった MafB 遺伝子の発現が BMP シグナルによって制御されていることも見出した。
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